
「もう少し落ち着きのある子になってほしくて、なにか一緒にできる体験はないかな」そんなふうに思ったことはありませんか。
私もまさにそうでした。
テレビやタブレットの時間が増える中で、親子で向き合う“静かな時間”ってなかなか取れなくなりますよね。
外に出かけるのも楽しいけれど、家でゆっくり心を育てる時間もほしい。
そんなときに出会ったのが、書道でした。
筆を持つなんて久しぶりで、最初は正直ちょっと面倒くさそうに感じたけれど、いざ娘と一緒に筆を動かしてみたら、びっくりするくらい心が落ち着いたんです。
墨の香り、紙の上をすべる筆の音、すっと息を整えて一文字書く瞬間の集中。
忙しい日常では味わえない“静けさ”がそこにありました。
娘も最初はぐにゃぐにゃの線ばかり書いていたのに、気づけば真剣な顔で筆先を見つめていて、その姿に私の方が胸を打たれました。
書道って、うまく書くことが目的じゃないんですよね。
自分の心をゆっくり見つめる時間であり、親子の呼吸を合わせる時間でもある。
そう思うと、字の上手い下手なんてどうでもよくなるんです。
この記事では、そんな書道や筆ペン体験が親子にもたらす変化や、安心して始められる方法を、私自身の経験をまじえてお話ししていきますね。
親子で楽しむ「書道体験」ってどんなもの?
“字をきれいに書く”だけが目的じゃないんです
書道と聞くと、どうしても「美しい字を書く」「習字の練習」といったイメージが強くなりがちですよね。
筆の持ち方やとめ・はね・はらい、そして姿勢や集中力まで意識しなければならない“堅い世界”と思われる方も多いかもしれません。
でも実際の書道体験では、必ずしも「正しく書く」ことが目的ではないんです。
特に親子での書道体験においては、「うまく書く」よりも
「自由に楽しむ」
「自分の表現を大切にする」
ことに重きを置くことで、子どもの心がのびのびと解放されていく様子が見えてきます。
たとえば、3歳や4歳の子どもが筆を持って書いた線は、文字というよりも“動きの軌跡”のようなもの。
でもその線にこそ、その子の個性や心の動きが現れていて、大人が「こう書くものだ」と決めつけずに、ただ見守ることが大切なんですよね。
正解も不正解もなく、今その子の中にある気持ちやエネルギーが素直に紙の上に出てくる瞬間。
そんな体験ができるからこそ、書道には言葉では伝えられない豊かさがあるのだと思います。
墨の香りも、筆の動きも、全部が“ふれあい”になる
書道には、日常にはない“五感”を刺激する体験が詰まっています。
墨の香りをかいだことがありますか?あのすこし懐かしいような香りに、心がふっと落ち着くんです。
水を混ぜながら墨をするという所作にも、静かなリズムがあって、まるで気持ちが整っていくような感覚があります。
わたしも娘と一緒に墨をすっているとき、最初は「地味だなあ」と思っていたのに、気づけば無言で二人、すり鉢の音だけが響く時間を楽しんでいたことを覚えています。
そして、筆を持って紙に向かうときの集中力。
最初はぎこちなくても、何度か書いていくうちに手元に意識が集まっていくあの感覚は、他の遊びではなかなか味わえないものです。
親が横で「いいね、その線おもしろいね」と声をかけるだけで、子どもの表情がパッと明るくなったり、自分から「もう1枚書いてみたい」と言ってくれる瞬間があります。
筆ペンやカラー筆で気軽に始められるのが魅力
書道と聞くと「道具をそろえるのが大変そう」と感じるかもしれませんが、最近は本当に便利なアイテムが増えてきています。
たとえば水で書けるシートなら、墨を使わずに何度も練習できるし、服や机が汚れる心配もありません。
さらに、筆ペンタイプのカラー筆を使えば、子どもでも扱いやすく、楽しさもぐっとアップします。
赤や青、ピンクや緑などカラフルな筆を使うと、それだけで作品の幅が広がって、まるで絵を描くような感覚で書道を楽しむことができるんです。
私の娘も「今日はピンクの筆で“ママ”って書いてみる!」と張り切っていて、そうやって“字を書く”こと自体を遊びの延長としてとらえられるようになると、学びのハードルがぐんと下がるんですよね。
書道を始めることが“特別な準備”を必要としない時代になってきた今こそ、親子で気軽にチャレンジしてみるチャンスです。
書道は“静かに過ごす”という力を育ててくれる
子どもにとって“静かに過ごす時間”というのは意外と難しいものです。
特に現代のように刺激の多い環境では、じっとしている時間が退屈に感じられてしまいがち。
でも書道は、その“静けさ”に自然と心を寄せていけるような不思議な力を持っています。
筆を運ぶとき、音はありません。墨の香りと、自分の呼吸だけ。
親子で並んで同じ方向を見ながら、言葉ではなく“間”を共有する。
そんな時間が積み重なっていくと、子どもも少しずつ、自分の感情や集中をコントロールできるようになっていくのを感じました。
わたし自身も、子どもと一緒に静かに過ごすことがこんなにも心を満たしてくれるなんて、正直予想していなかったんです。
何歳からできる?年齢別おすすめの始め方
3歳~5歳は“感じる書道”からスタート
小さな子どもに筆を持たせるなんて早すぎる、そう思う方もきっと多いと思います。
けれど実際には、書道の入り口ってもっとずっと自由でやわらかくていいんです。
3歳や4歳の子は、筆を握っただけで「わあ、これふわふわしてる!」「にじんだ!」と目を輝かせてくれます。
大人が見たら“ぐちゃぐちゃ”に見える線も、その子にとっては立派な“作品”なんですよね。
この時期は、「字を正しく書かせる」ではなく「筆って面白い!」と感じてもらうことが何より大切。
水書きシートやカラー筆ペンを使って、なぐり描きやお絵描き感覚で遊びながら慣れていけば十分です。
娘は最初、自分の名前の“ま”を書こうとしていたのですが、なぜかハートの形になっていて、それを見て「これは“ま”なの?」って笑いながら話せたのが、今でも大切な思い出です。
6歳以降は“書く意味”にも触れていける
小学校に入る頃になると、子ども自身が
「きれいに書きたい」
「ちゃんと書きたい」
と思い始めるようになります。
もちろんすべての子がそうとは限らないけれど、ひらがなや漢字を習い始める時期と重なることで、「自分の名前をきれいに書けた!」という喜びが、自信につながっていくことが多いです。
この時期には、筆ペンや墨を使った簡単な“作品づくり”を取り入れるのもおすすめです。
「ありがとう」や「ママへ」など、身近な言葉を選んで書いてみると、気持ちを文字に込める楽しさを感じられますよ。
うちの娘が書いた「だいすき」の筆文字を額に入れて飾ったら、それを見た本人が照れながらも嬉しそうで、ああ、こういう経験って一生ものかもしれないって思いました。
年齢より“子どもの関心”を大事にしてあげて
そして、もう一つ忘れてはいけないのは「何歳だからこれをする」と決めつけすぎないこと。
同じ年齢でも、興味を示す子とそうでない子はまったくちがいます。
筆に触れること自体が楽しい子もいれば、最初は抵抗を感じる子もいる。
だからこそ、まずはおうちで自由に遊ばせてみて、「これ、おもしろいね!」という感覚を共有するところから始めるのが一番自然です。
親の期待が強すぎると、子どもは
「ちゃんと書かなきゃ」
「失敗しちゃダメ」
とプレッシャーを感じてしまいます。
だからこそ、大人も“ゆるく始める”気持ちを持つことがとっても大事なんですよね。
「楽しめるところからでいいんだよ」って伝えながら、子どものペースに寄り添ってあげてくださいね。
おうちでできる!書道・筆ペン体験の始め方
最初の一歩は“気軽に試せる”道具から
「道具をそろえるのが大変そう」「墨で家が汚れたら困る」そんな不安、すごくよくわかります。
わたしも最初はそうでした。
でも、最近は本当に便利なアイテムが増えていて、思っている以上に気軽に始められるんですよ。
たとえば、筆ペン。
これ1本で墨もいらないし、筆のような感触も味わえるから、初心者や小さな子どもにぴったりです。
それから、水で書ける練習シートもおすすめです。
筆に水をつけて書くだけで、墨のように見える文字が現れ、数分で消えて何度も使えるんです。
テーブルが汚れる心配もなく、服につくこともないので、お風呂上がりのちょっとした時間にもサッと取り入れられて、親子のふれあいにもぴったりですよ。
書く言葉に“想い”をのせてみよう
書く内容に悩むときは、子どもが好きな言葉や名前から始めてみてください。
「パパ」「ママ」「ありがとう」「おやつ」「ねこ」……どれでもいいんです。
子どもが選んだ言葉に耳を傾けて、その文字を一緒に書いてみると、ただの“お習字”ではない、心をやりとりするような時間が生まれます。
わたしの娘はある日「まほう」という言葉を選んで書きました。
なんでその言葉なの?と聞いたら「ママのごはんがまほうみたいにおいしいから」って。
そんな言葉を筆で書いて残せるって、すごく尊い体験ですよね。
作品にして“かざる”ことで特別な時間になる
せっかく書いたら、しまっておくだけじゃもったいない。
壁に貼ったり、額に入れたり、おじいちゃんおばあちゃんにプレゼントしたりすることで、子どもにとっての「書道体験」が“誇らしい思い出”になります。
わたしも、娘が書いた「だいすき」の文字を100円ショップの額に入れて、リビングに飾っています。
その一枚を見るたび、娘の気持ちとあのときの空気が、ふわっとよみがえってくるんですよね。
子どもって、自分の“やったこと”を誰かが認めてくれるだけで、自信がポンッと湧いてくるものです。
だから、「きれいに書けたかどうか」じゃなくて、「書いたこと自体がうれしかったね」と一緒に喜んであげる。
それが何よりのごほうびになるんだと思います。
書道体験が子どもの心に与える力とは?
集中する力が、少しずつ育っていく
初めて筆を持ったとき、娘は紙の上をなぞるように線を引きながらも、どこか落ち着きがなく、途中で投げ出してしまうこともありました。
でも、数回繰り返すうちに、筆を紙にのせる前に一呼吸おくようになって、線を引くスピードがゆっくりになっていったんです。
その変化に、私は心から驚きました。
書道には、自然と“間”を感じ取る力が必要になります。
筆を動かすとき、線の始まりと終わりに意識を向けたり、呼吸を整えてから書き始めたり、ひとつの動作に集中することが求められる。
そういった時間を重ねることで、子どもの中に“自分の世界に静かに入り込む力”が育っていくんですよね。
ゲームやYouTubeのように常に刺激のある世界とは違って、静けさの中で心を研ぎ澄ませる力が、ここではゆっくり根を張っていくのだと思います。
「できた!」という実感が、自己肯定感につながる
子どもにとって、「じぶんでできた」という感覚は、自信のはじまりになります。
字がうまく書けなくても、筆で1枚の紙を仕上げただけで「わたし、こんなにできた!」という達成感を感じられるんです。
特に、親が「これすごいね」「ママにも書けないよ~」なんて声をかけると、子どもは本当にうれしそうな顔をします。
うちでは、娘が自分の名前を何度も練習して、少しずつ形が整ってきたとき、「これ、ばあばに見せる!」って言ったんです。
その一言に、私はグッときてしまいました。
「誰かに見せたい」と思えるくらい、自分の書いたものを誇りに思えたんだなって。
書道って、ただの“技術”じゃなくて、自分の中にある「がんばった」「できた」という実感をそっと引き出してくれる体験なんですよね。
“心をととのえる”って、こういうことかもしれない
筆をとって、墨の香りを感じながら紙に向かう時間は、ただ静かであるだけじゃなく、自分の中にあるモヤモヤや緊張が、ふっとほどけていくような感覚があります。
子どもって、大人が思っている以上にたくさんのことを感じて、悩んで、でも言葉にできなくて抱えていたりするんですよね。
そんなときに、何かを無理に話させるんじゃなくて、一緒に筆を持って静かな時間を共有するだけで、子どもの中にあるざわざわした気持ちが少し落ち着いていくこともあると思うんです。
「書道って、心をととのえるってこういうことかもしれないね」そんなふうに感じたのは、娘と無言で並んで筆を動かしていたあの時間があったから。
大人の私にとっても、あの静けさはかけがえのない時間になりました。
親子で参加できる体験教室やイベントもあるよ
まずは“気軽に参加できる”ワークショップから
書道って、家で一人で始めるのもいいけれど、親子で一緒に参加できる教室やイベントもすごくおすすめです。
特に、短時間で体験できるワークショップ形式のものは、初めての人でも緊張せずに楽しめる雰囲気があって、入り口としてぴったりなんです。
わたしも娘と一緒に書道の体験ワークショップに参加したことがあるのですが。
まわりの子どもたちの姿を見て刺激を受けたり、「こんなふうに書くんだ!」と他の親子の工夫を学べたりして、家でやるのとはまたちがった良さを感じました。
それに、講師の方がそばでやさしく声をかけてくれると、子どものやる気がグッと引き出されるんですよね。
「筆を持つのが初めてで不安」「どう教えたらいいかわからない」そんな方こそ、こうしたイベントを利用してみると、親子一緒に“初めての楽しさ”を味わえると思います。
教室選びで大切にしたい“空気感”
どの教室でもいい、というわけではありません。
小さな子どもと一緒に参加するなら、なにより大切にしたいのは“雰囲気”です。
先生の話し方がやさしいか、失敗しても笑ってくれる空気があるか、子どもがのびのびできるような配慮がされているか。
これって、実際に見てみないとわからないことも多いので、可能なら見学や体験参加をしてから決めるのが安心です。
わたしは一度、「もっとこうして!それじゃダメ!」と声を荒げる先生の教室に当たってしまって、娘が書くのをやめてしまったことがありました。
あのときは本当に申し訳ない気持ちになりました。
でもそのあと、別の教室で「この“し”すごくすてき!風みたい!」って褒めてもらってからは、また自信を取り戻してくれたんです。
子どものやる気って、ほんのひとことでふくらんだり、しぼんだりするからこそ、安心して楽しめる場所を選んであげたいですよね。
イベント選びのチェックポイント
参加するイベントを選ぶときは、いくつかポイントがあります。
対象年齢が明記されているか、保護者同伴が可能か、持ち物や所要時間が無理のない範囲か、など。
特に小さいお子さんと一緒の場合は「汚れても大丈夫な服装で」といった注意書きがあるかどうかも確認しておくと安心です。
また、参加者が多すぎないイベントの方が、先生との距離も近くてアットホームな雰囲気になりやすいです。
書道に限らず、こういう“最初の体験”って、その後のイメージに強く残るので、できれば親子でリラックスできる環境を選んであげてくださいね。
まとめ:筆を通して“心を整える”親子時間を
子どもと一緒に筆を持つ時間は、ただ字を練習するだけのものではなくて、お互いの心の動きに静かに寄り添うような、豊かなふれあいの時間になるんだなと私は感じました。
言葉で「落ち着いてね」と伝えるよりも、ただ隣で一緒に静かに筆を走らせるだけで、子どもの気持ちが少しずつほどけていくのを感じる瞬間があるんです。
それは、子どもにとっても親にとっても、忙しい日々の中ではなかなか得られない“余白”のようなもの。
お互いに無理をせず、うまく書けるかどうかにこだわらず、ただ一緒に“今ここ”に集中するだけで、心がすっと軽くなることがあります。
書道のすごいところは、そんな時間を道具ひとつで作り出せることかもしれません。
上手に書かせようとしなくて大丈夫。
にじんでも、曲がっても、思い通りに書けなくても、それがその子の今の“形”であって、そのひとつひとつがちゃんと尊いもの。
だから、まずは楽しむところからでいいんです。
「これ、なんて書いたの?」って笑いながら聞いてみたり、「この線おもしろいね」って一緒に眺めてみたり。
そんな会話こそが、子どもにとっての“心が整う時間”になるんだと思います。
ほんの10分でもいいんです。
お気に入りの筆ペンを手に取って、子どもと向き合う静かな時間を過ごしてみてくださいね。
書いた言葉や線の先に、きっと新しい親子の思い出が生まれるはずです。



